もう一つのディック人形劇の世界
幻想人形劇「地図にない町」
クラルテは「薄明の朝食」に先立ち、昨年(2012年11月25日)、劇団アトリエ30周年を記念して有志による実験公演、フィリップ・K・ディック原作「地図にない町」を上演しました。
物語は、かつて都市開発競争で敗北してしまった失われた町が、自分たちの住む町に溶け込むように入り込んでくるというストーリー。有りもしない駅の回数券を買い求めた男に翻弄される主人公、駅の助役ペインとその恋人の駅員ローラ。 消えてしまったはずの地図にない町、メイコン・ハイツは本当に存在するのだろうか?
幻想と実在の時空の狭間を行ったり来たりするディック幻想人形劇です。 脚本は「薄明の朝食」と同じく東口次登が書き上げている。
幻想的な舞台を偏愛する三木孝信が演出を担当した。
作品を特徴付けたのが、寸法30㎝足らずの極めて小さな人形です。役者は神経質な人形操作が要求され、人形の存在理由と格闘した。
その実験的な人形と舞台美術を西島加寿子が手がけた。
他に、スタッフは照明/永山康英、制作/齋藤麻美が参加。出演者は主人公、駅の助役ペインに奥洞昇、その恋人ローラを杉山芳未が演じる。他にメイコン・ハイツから来た謎の住人を三木孝信、車掌を茨木新平、赤い服の女を横内麻里絵が演じた。
SF作家、フィリップ・K・ディックの作品世界は、密かに私たち人形劇人の創造現場に侵蝕しているようだ!