無機質な人形たちで

東口 次登(脚色、演出

モドカシイ想い

永島梨枝子(人形美術)

舞台は薄明のよう

西島加寿子(舞台美術)

2020年 東京と福島

一ノ瀬季生(音楽)

ディックの幻視した悪夢、そして
現代の悪夢

西浦英司(ライター)

ささやかな日常を続けていく為に

日高真紅(日本SF作家クラブ会員)

出演者のことば (1)

出演者のことば (2)

もう一つのディック幻想人形劇の世界
「地図にない町」

 

モドカシイ想い

人形美術 永島梨枝子


 人間は、想像力に支えられた、ヒトなつっこい生きものなのだと思う。人間どおしだけではない、身のまわりの無機質なものにも人格を感じたり、そこに意志があるように思えたりする。他を思いやる、まさに人形劇そのものだ。ひととつながりあい、心を通わせあって生きていくための、人形劇は準備のようなものかもしれない。

 ディックの世界の人たちも、家族や人間に対する熱くて深い想いに満ちあふれている。一方通行だったり、報われなかったり、もどかしい想いを抱えながら現実の困難の中でけんめいに生きようとする。

この登場人物たちを、平面を組み合わせたような造形で表現してみようと思いたった。が、とりかかってすぐに、これは大変だ、と思った。自由で不自由、制約がないのに制約だらけ、たよりないのにけっこう頑固…。この人形たちの不器用なありようを補うのは、たぶん、彼らの想いと演技者の熱、そして何より観客の想像力なのだろう。