人形劇「死と再生・生きものたちの物語」
企画したJT生命誌研究館のスタッフの思いです。

生物の研究からわかったことを、日常の暮らしの中に置くとどうなるか。舞台を制作をしていく過程そのものがその試みでした。一緒に作ったクラルテさんは、とてもおもしろい反応をしてくださいました。それがそのままストーリーのなかに生かされていくことになります。

 舞台は、身近な人の死についての普通の高校生の苦悩を軸に進行し、それに対応して、科学によって分かってきた生きものの死が示されます。驚きや違和感など、高校生の反応ややりとりがまさに科学と日常の融合になっています。
 
 死とは何なのか。生物としてのヒト、まずそこに戻って死の意味を考えます。生きものが地球上に生まれてから、数々の死を繰り返し、その結果として今があるのだとすれば、何千万種の生きものが生きているのは、すべてそれらの死の上にあると言ってもよいでしょう。生きものは「生きることを指向するもの」ですから、生きるための方法の中に死は包含されているのかもしれません。まぎれもない事実としての死。そしてなお生きているわれわれ。生きものの長い歴史の中で、死はどんな意味をもっているのか。これからの生き方を考えるうえでそれはとても大事なことではないでしょうか。ぜひ一緒に考えて下さい。
人間にとって死は、免れえない事実です。そのため、生きものは必ず死ぬものだと思いがちですが、単細胞生物のバクテリアは、2倍、4倍と分裂し、環境が許す限り増えることができ、基本的には死はありません。死は必ずしも生きることの本質ではないと言えます。
 ではなぜ死ぬようになったのでしょう。
 多細胞生物になると細胞分裂も単純ではなくなり、老化を避けられなくなります。そこで、工夫したのが生殖細胞です。生殖細胞から新しい個体を作り直し、世代交代をする。個体として死ぬことで種の存続をはかったと考えられます。生きものはそれぞれに生きるための工夫をしています。その工夫のひとつが死なのです。
 生物の研究の現場では、さまざまな角度からその見事な仕組みについて研究がなされ、いろいろなことがわかってきています。研究している人たちに協力していただいて、話を組み立てました。