ものがたり

第一幕

 ころは平安時代。貴族が栄華の夢をむさぼる中、すさぶ夜に大下泰平を願う若者がいた。その男源頼光18オ。剛力の若武者、渡辺綱を引き連れ、国を守る幻の名剣を探し求める旅の最中、静岡は掛川、小夜の中山に宿をとる。そこへ右大将高藤が、平氏の大将・平正盛をつれて、宿を明け渡せと争いに。

 結局、頼光は高藤が天皇の親戚であるため、闘わずして宿を明け渡す。その宿屋には、正盛の家来物部平太を父の仇とねらう小糸(糸萩)と、許婚の喜之助が奉公していた。小糸は代々家に伝わる名剣でみごと物部平太を討ち果たす。が、正盛の家来に追われ逃げ惑うこととなる。

 行き場をなくした二人は自害しようと決意し、死骸を埋めてもらうよう、近くの宿屋に泊まっていた頼光に助けを求め、名剣を献上する。頼光は 〔これこそ幻の剣〕 と喜び喜之助に碓氷定光の名を授け、小糸と共に主従の契約を交わす。

 一方、高藤は正盛の武士の面目のために、小糸をかくまった罪で頼光を天皇へ訴える。頼光は勅勘により都を追われ、山野をさすらうこととなる。

 都では頼光と結婚の契約を交わす澤潟(おもだか)姫が頼光の帰りを待ち侘びていた。そこへ、たばこ売りの源七(坂田時行)が訪れ三味線を弾く。その歌を聞きつけた遊女の八重桐は館内へ入り、声の主が元夫、坂田時行だと知る。そこで八重桐は時行の妹・小糸が父の仇を討ち、その事で頼光が都を追われていることを話す。
 
 時行は自首の念にかられ、腹を切る。と、その魂は八重桐の胎内に入り、生まれた子が頼光のために必ず高藤を滅す事を願い、時行は息果てる。八重桐は山姥と化し飛び去って行った。

第二幕

 源氏志しの強者を集めんと北国へ向かう源頼光。だが、みな平家になびき家来となるべき者はなく、渡辺綱・碓氷定光とも合えぬまま、四年が過ぎ落人の身となる。その頼光の前に追いはぎ・卜部熊竹が現れ、刀を渡せと言い放つ。だが頼光の威圧におされ、お供することを志願する。そこで、卜部末竹という名を授かり旅を始める。

 夜が更け人里離れ休む所もなく、道なき道をさまよっていると、老女に出合い一夜泊めてもらうことにする。頼光は老女の居ぬ間にあかずの間をあけ、鬼のような童を見つける。老女は山姥と化し我が身の変化の訳を話し、坂田時行の生まれ変わりの快童丸を頼光の家来にと頼む。

 頼光は荒熊を投げ倒す快童丸を坂田金時と名づけ、山姥の神通力で渡辺綱・碓氷定光を呼び寄せ、ここに四天王が揃う。

 頼光と四天王は日本国に源氏の名を知らしめるため、近江の国高懸山に住む悪鬼を退治する旅に出た。山また山をめぐり、見た事もない景色になると、この世のものとも思えない赤鬼が火炎を吹き現れる。その赤鬼を金時が羽交い締めにし、大地に打ちつけ大縄かけて打ち倒す。

 かくて都では鬼退治の知らせが盛んになる。四天王は大鬼を連れ宮中に現る。そこで鬼退治の褒美に頼光の勅勘がとかれ、正盛と高藤に処罰がくだった。晴れて頼光は自由の身となり、さらなる悪鬼を退治するため、二千年の世に旅に出る。