梗概(あらすじ)
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永延二年(九八九)の如月の頃。宮中に夜な夜な変化の黒駒があらわれ人びとを悩ませた。怨霊誅伐の勅命を受けた源頼光は、綱や公時ら腹心の勇士を従え、首尾よくこれを射留めたが、近づいてみると、その正体は、昔、滅ぼされた平親王将門の繋馬の族指物で、すべて将門の怨念の仕業と知れた。
その頃、将門の遺児、良門は父の仇を討とうと将軍太郎と名乗って謀反を企て、妹小蝶を頼光の館に忍ばせ、復讐の機会をうかがっていた。二人は筧の竹筒を通して内外の情報を交換しあっていたが、小蝶は、頼光に近づく内に、頼光の弟頼信を恋い慕ぅようになり、頼信の恋人、江文の宰相の姫を頼信の弟頼平と契らすことによって、頼信の心を得ようとした。源家の家督定めの折、小蝶に戯れて恥をかこうとした頼平の乳兄弟、箕田次郎纜(ともづな)は、頼平の機転に救われ、深く恩義を感じる。 小蝶の手引きによって頼平は頼信と偽って詠歌の姫と契ったが、繋馬の陣幕・旗印が、江文の宰相の館にあると知った良門の配下、藤原保輔等の乱入によって露顕し、二人は手をとりあって落ちのびる。頼信は院宣により、詠歌の姫の代りに伊予の内侍を娶ることとなり、その祝宴の夜、良門は騒ぎにまぎれて頼光を暗殺しょうと、例の筧をつかって小蝶と示しあわそうとしたが、その秘密を頼光の御台所に知られ、小蝶は殺される。 良門も危うかったが、小蝶の怨念によって救われ逃げのびる。一方、詠歌の姫と駆落ちした頼平は、鞍馬の別当をたよる道すがら、良門一味と出あい、詠歌の姫を人質に脅されて、良門の一味となり、兄頼信の鞍馬帰りを待伏せ、討たんとして逆に捕ぇられる。その身は死罪。江文の宰相は追放と決まる。しかし頼平の乳母である綱の叔母の切なる願いで、その執行は七日間延期されたものの遂にその日がやって来た。 宰相の妻、萩の対は頼平を討って夫の勅勘を解こうと姫に手引きを求めたが、姫は頼平の身代りとなって母に討たれようとし、灯火の消えるのを合図に長髪の者を斬るように告げるが、事のいきさつを察した綱の従弟、箕田次郎纜が姫に替り、萩の対の刃に刺される。纜の死を賭しての諌めにより、頼平は翻意する。撹は、家督定めの折、頼平に窮地を救われたことへの恩義を死を以て報いた。その心に、討手として来た坂田公時も深く感じ、首の代りに、懸緒の切れた古烏帽子と血刀を頼光に差し出し、頼平と為成の罪も許されることとなった。この時良門捕縛の知らせがあり、綱に生捕られた良門が頼光の面前に据えられた。が頼光は、繋馬の旗印を良門に与え、戦場での再会を約して釈放する。 一方、頼信の新妻、伊予の内侍は物の怪に悩まされて床に伏しがちであった。四天王の女房たちが慰めるが、やがて、それが小蝶の怨霊の仕業と知れる。小蝶は葛城山の土蜘蛛の精霊と名乗って襲いかかるが、頼信の持つ膝丸(ひざまる)の威力に退散、内侍は本復する。そしていよいよ葛城山での最后の決戦の秋が迫まった・・・。 |