ものがたり

 胸もときめくおまつりだ。聖霊降臨祭のときが来た。野にも森にも草萌ぇ花は咲きみだれ、丘に山に、茂みに垣に、目ざめたばかりの鳥たちが、たのしげな歌をきそい合ぅ。百獣の王、ライオンのノーベルは、臣下を残らず集め合議を催した。欠席するものなどあるまじきこととのきついお達し。それでもただ一人欠けた者あり、これぞ狐、ライネケ。狐ライネケは悪逆非道の限りをつくし、あまたの動物達から訴えられた。訴えを聞いた大王ノーベルは、その罪状を明らかにせんと、裁判の法廷に、狐ライネケを出頭させるよう熊のブラウンと猫のヒンツエに命じた。王の命を受け、しぶしぶ出かけた熊のブラウンと猫のヒンツエは、それぞれ、ライネケの奸計にあい大怪我をして命からがら逃げ帰る始末。狐狩りをと怒る大王ノーベルをおしとどめて、胸に一物の穴熊グリンバールトが三度目の使いを買って出た。穴熊グリンバールトとかたらつたライネケは、自ら裁判の法廷に出頭する事にした。ライネケは我が身を守る為弁舌の限りを尽したが、大王ノーベルは罪状明白なりと死刑を宣告。ライネケは絞首のロープを首にかけられたまま、最後のざんげを嘆願。宝のありかを餌に、まんまと王をたぶらかし、死刑を免れ巡礼の旅に出ると称して、兎のランペもたべてしまう。裏切られたと知った大王は、本気で狐狩りを考えたが、ライネケは先手を打って法廷に出頭。穴熊や猿の弁護も、ランペ殺害の証拠の前には力なく、絞首刑の判決。しかし悪智恵に勝るライネケは、巧みな弁舌とつくりごとで云い逃がれ、欲に目がくらんだ大王は宝と引き換えに死刑を取り消した。ライネケに、度々痛い目にあわされてきた狼のイーゼグリムは、口先では勝てぬと決斗を決意。正しいものに神の判定が下されるとライネケとの決斗となる。しかしライネケに謀られて狼は敗れライネケは遂に宰相となる。ゲーテは終章に日く、「諸氏は有為天変から日々、何を学ばれるや、世間とはかような成り立ちで又永久にかくある故。」