物語
私、カナ。小学校4年生。お父さんと二人暮らしです。お母さんは私が小さい頃、覚えてないくらい昔に病気で死んじゃった。でも今は親子二人、楽しく暮らしてます!
待ちにまった夏休み!
なのに、お父さんは出張で外国に行くんだって。私は一人でお留守番のはずだった。やったぁ!誰にも邪魔されない私だけの…!
「雨の向こう側からやってきました。わりあい近くですよ。雨のはしをちょっとめくれば、そこだけ明るくて、かたつむりの殻のようになってる所がある、それが雨の道です。」
雨の向こう側の世界から来たっていうワニは、好きな時に好きなだけ雨を降らせることができるんだって。
なんだかおもしろそう!! よろしくね、ワニさん!
そういう感じで、私たちの夏休みは始まった。
お父さんが出かけて、悲しくはないんだけど、胸の辺りが何かへんな感じ。胸の中にすき間ができたみたい…。
「それを寂しいっていうんじゃないのか?」ってワニは言うけれど・・・。
「カナちゃん、湖を見に行こう! 今夜はとびっきりの満月…。こんな夜、雨の向こう側の湖に棲む魚たちは空を泳ぐ。その魚たちの落とす雫を飲むと、願いごとが叶うんだ。さぁ、一緒に夢を飲みに行こう!」
私の夢??! …私、お母さんに会いたい!
ワニが歌うと雨が降り出した。
♪雨はかってに 降ってくる
ずんずん歩けば ざんざんふるよ
ずんずん ざんざん ずんずん♪
雨の向こう側ってどんな世界だろう…。
あれれ!? 雨の向こう側から何かついて来ちゃった!!
ふわふわっと毛玉みたいな、しっぽのあるこの生き物は一体、何…!?